扶養家族についての知識をつけて賢い選択ができるように

2019/10/18

扶養家族についての知識をつけて賢い浅学ができるように-アイキャッチ

社会保険や税金の仕組みが絡み、わかりにくいのが扶養の話です。そうは言っても納税や健康保険、年金にも関わってくるので、知らないままでは済まないのも仕方のないところ。

制度をかしこく利用して、家族と自分のために一番いい選択をしたいものです。

扶養家族の基本

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まずは、扶養について全般的に知ることから始めます。制度上の用語や法律との関連などについて解説します。

扶養とは

扶養とは、自分で収入を得て生活することをしていない人、それが難しい人を養い、面倒を見ることです。扶養関係にあたるかどうかという点が各種法律で定められており、養っている人がいると認められる場合は税金や年金、健康保険などが優遇されます。

血縁関係や婚姻関係、生計が同一か、同居しているかが、扶養する関係にあるかどうかの判断基準となります。

扶養する義務について民法で規定があり、近親者の面倒を見なければならないケースについて、扶養義務があるかどうか、義務の度合いについて扶養者と被扶養者の間の事情によって個別に判断されます。

扶養親族と被扶養者

養ってもらっている人を「扶養親族」「被扶養者」という呼び方をします。扶養親族は税金にかかわる手続き上の呼び方で、被扶養者は社会保険に係る手続き上の呼び方です。後述しますが、それぞれの認定要件は異なっています。

被保険者と被扶養者

扶養に関する用語としてもう一つ「被保険者」という言葉があります。厚生年金や健康保険を扱う場合の用語で、保険の補償を受けられる人を指します。厚生年金や健康保険は夫が給料から厚生年金と健康保険料を差し引かれ、妻が夫に扶養されていれば厚生年金の掛け金と健康保険の保険料が免除され、妻も老齢基礎年金と健康保険の補償を受けられる制度になっています。この場合の夫が被保険者で、妻が被扶養者ということになります。

扶養義務について

民法では扶養義務について定めています。家族として一緒に暮らす配偶者や子ども、親などは扶養する義務があります。また、離婚した夫が別居する子どもの養育費を支払うといったケースも扶養義務の考え方から家庭裁判所が夫に対しその義務を課すものです。

扶養義務の内容

民法で定められる扶養義務は、夫婦間、成人するまでの子供などについて家族として当然に援助しなければならない扶養義務(生活保持義務)と、異なる生計であっても、自分に経済的な余裕がある場合は、成人した子供や兄弟姉妹、働けなくなった親などを経済的に援助しなければならない(生活扶助義務)とするものです。

これに加えて3親等内の親族で家庭裁判所の審判により特別な事情があると認められた場合について、例外的な扶養義務があるとされるケースもあります。

扶養義務の放棄

法律の上では扶養義務を放棄することはできないことになっています。しかし、実際に扶養義務を果たすことが可能かどうか、どこまで果たすべきなのかという問題は、扶養する側とされる側の経済的事情など個別に判断されることになります。

扶養義務と生活保護

経済的に自立できず扶養してくれる人がいない場合の公的扶助として生活保護があります。生活保護を申請する際には扶養義務のある近親者がいないかどうか調べられますが、扶養義務者がいれば生活保護が受けられないということではありません。扶養義務者からの扶養が受けられない場合、扶養するという確約が得られない場合には生活保護が受けられます。

扶養手当

税金や健康保険以外にも扶養家族がいる場合に優遇または援助が受けられるものがあります。公務員の場合は法律で扶養手当を支給することが定められています。児童扶養手当はひとり親の世帯に対して支給されるもので、社会保障制度のなかの社会手当に含まれます。

公務員の扶養手当

一般の会社でも賃金制度として扶養手当を設けているところがありますが、法的な規制はありません。公務員の場合は法律で支給することが定められているものであり、扶養家族の要件が決められています。

  • 内縁関係を含む配偶者
  • 子・孫・弟・妹(22歳の誕生日以降、最初の3月31日まで)
  • 父母・祖父母(満60歳以上)
  • 重度の心身障害者

国家公務員に対しては上記の要件があり、地方公務員はこれに準ずるものが条例で定められます。虚偽の申告など不正受給には罰則があります。

児童扶養手当

児童扶養手当は、父母の離婚や一方の死亡・障害状態、未婚である場合などにその子供を育てる一方の親に支給されます。

支給額は、子供の数により基本の月額が定められ、養育する親の所得と扶養親族の数によって基本月額を減額する一定の計算方法により算出されます。

児童扶養手当の詳しい内容は以下でご確認ください。

厚生労働省 母子家庭等関係

税における扶養

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税金における扶養は、扶養家族がいる納税者(扶養者)の収入から一定の金額を控除することで課税所得を引き下げ、納税額を減らす仕組みが取られています。納税の申告などの書類のなかでの扶養親族という用語が使われます。

所得税の扶養控除

所得税の場合の扶養親族に該当する人の条件は以下のようになっています。

  1. 16歳以上(その年の12月31日時点の年齢)
  2. 配偶者以外の親族
  3. 納税者と生計を一にしている(同居、別居問わず)
  4. 年間の所得金額が38万円以下(2020年分以降は48万円以下)、給与収入のみの場合は103万円以下

2番めの親族は直接血のつながりがある場合は6親等、親戚にあたる場合は3親等と定められています。

所得税の控除額は以下のとおりです。

区分 控除額
一般の控除対象親族(16歳以上) 38万円
特定扶養親族(19歳以上23歳未満) 63万円
老人扶養親族(同居老親等以外のもの) 48万円
老人扶養親族(同居老親等) 58万円

上記の詳しい内容は国税庁のサイトでご確認ください。

国税庁 「所得税 扶養控除」

住民税の扶養控除

所得税は国に納める税金で住民税は地方自治体が管轄する税金です。扶養親族に該当する要件は所得税と同じですが、控除額と扶養控除を反映する年度に違いがあります。所得税はその年の所得に対して課されるもので、給与所得者が年末調整をするのはそのためです。住民税は前年の確定した金額に課されるので年末調整はありません。

住民税の控除額は以下のとおりです。

区分 控除額
一般の控除対象親族(16歳以上) 33万円
特定扶養親族(19歳以上23歳未満) 45万円
老人扶養親族(同居老親等以外のもの) 38万円
老人扶養親族(同居老親等) 45万円

社会保険における扶養

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社会保険は医療保険(健康保険、国民健康保険など)、年金保険(厚生年金、国民年金)、介護保険、雇用保険、労災保険の総称です。このなかで扶養している人がいるかどうかが保険料の支払いに係わってくるのが医療保険と年金保険です。

厚生年金

一般的な夫婦の例で言うと、夫(被保険者)の被扶養者に該当する妻が厚生年金の保険料を支払うことなく国民年金の老齢基礎年金を受給することができるというのが厚生年金の扶養です。

厚生年金の被扶養者となれるのは配偶者のみであり、扶養控除ではなく配偶者控除という言葉が使われます。配偶者控除を受けられる要件は被扶養者の年収に130万円以下という制限があり、それを超えると被保険者の扶養から外れることになります。

所得税の配偶者控除は内縁関係の場合は対象になりませんが、厚生年金の場合は事実婚などの場合でも配偶者控除を受けられます。

厚生年金については以下の記事も御覧ください。

健康保険

厚生年金は配偶者のみが控除の対象ですが、健康保険の場合は、

  • 配偶者
  • 子、孫、兄弟姉妹
  • 父母、祖父母など直系尊属

は同居しているかどうかに関わらず被扶養者となり、上記以外3親等以内の親族と内縁関係の配偶者の父母、子どもについては同居していれば被扶養者となります。

加えて、被扶養者として認定されるためには年収が130万円未満、かつ、同居の場合は収入が被保険者の収入の半分以下、別居の場合は被保険者からの仕送り額未満という条件がつきます。

国民健康保険

給与所得者の健康保険と異なり、自営業などの場合に加入しなければならない国民健康保険には扶養という考え方がありません。したがって、同じ世帯であっても人数分の保険料を支払うことになりますが、保険料は世帯ごとに算定されます。国民健康保険は自治体で運営されるため市区町村により金額は異なります。

介護保険

介護保険制度は40歳から保険料を支払います。40~64歳までを第2号被保険者、65歳以上を第1号被保険者と区分され、第1号保険者については年金額が18万円以上の場合年金から徴収されます。

第2号保険者が給与所得者の場合は、被扶養者はから介護保険料は徴収されません。健康保険の被保険者が40歳に達しておらず介護保険料の納付義務がなくても、被扶養者に第2号被保険者がいる場合には特定被保険者として介護保険料を徴収される場合があります。この場合に徴収するかどうかは各種健康保険組合によって異なります。

年末調整、履歴書の扶養家族の書き方

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扶養家族について記入しなければならない年末調整や履歴書などの書類を書く時に、手続き上で扶養家族に該当するかどうか迷うケースは多いと思います。特に年末調整では扶養される側の年収なども絡むため記入が複雑です。

年末調整

給与所得者は給料からあらかじめ所得税が天引きされ、会社が納税しています。源泉徴収された金額と、生命保険や住宅ローンなどの支出を計算にいれた実際の所得による税額の差額を、プラスマイナスするのが年末調整です。

配偶者は扶養控除ではなく配偶者控除

年末調整では配偶者が納税者本人の扶養家族にあたる場合の税額控除を扶養控除ではなく配偶者控除として扱います。

年末調整で作成するマル夫、マル配、マル保・配特

2018年の年末調整から「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」(マル夫)、「給与所得者の配偶者控除等申告書」(マル配)、「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」(マル保・配特)の3種類の用紙に記入する形に制度が変更されました。

改正により配偶者の年収に加えて、納税者本人の年収も配偶者控除算定の基準に加えられたため、本人と配偶者の所得金額の計算をマル配の用紙で行います。

「給与所得者の配偶者控除等申告書(マル配)の記入例については以下を御覧ください。

国税庁 源泉所得税関係

履歴書

アルバイトやパートに応募する際の履歴書は、扶養されている側の人にとっては記入の仕方に迷うところです。履歴書を見る側にとっての扶養家族欄は採否に影響を与えるものではありませんが、税・社会保険の算定に必要であることに加えて、「扶養の範囲で働きたい」「介護の必要な親がいる」など、応募者の事情を推測する手がかりになります。

扶養家族数

扶養家族の人数は配偶者を除いた自分が扶養義務を負う家族数となります。

例えば、妻の年収が130万円以上で夫の被扶養者に該当しない場合でも、その子どもが夫の扶養に入っていれば、妻が履歴書を書く際に子どもを扶養家族にカウントする必要はありません。

また、家族を2重に扶養にすることは認められませんが、2人の子どもがいる場合にひとりを夫、もうひとりを妻の扶養とすることは認められています。

配偶者の扶養義務

配偶者が自ら税と社会保険を払っていれば、配偶者の扶養義務はないということになります。

内縁関係の配偶者については、配偶者控除は認められず、社会保険では認められますが、履歴書の場合に配偶者に含めるか扶養家族に含めるか決まりはないようです。ケースバイケースで判断してよさそうです。

扶養家族のメリット・デメリット

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被扶養者と認定されるかどうかは、妻が夫の扶養の範囲で働く、老齢の親を扶養に入れるべきかどうかといったことが多く問題にされます。この2つのケースについて詳しく見ていきます。

配偶者控除を受けられる収入と被保険者になれる収入の限度額

夫が給与所得者で妻が扶養に入っているとした場合に、妻の収入により税金や社会保険にどういう影響を与えるかを見てみます。

配偶者控除の控除額は妻の収入に加えて夫の収入も合わせて決められ、夫が給与所得のみの場合、その年収が1,120万円以下、1,120~1,170万円以下、1,170~1,220万円以下と3段階に分かれています。この3つの区分ごとに妻の収入によって配偶者控除の金額が定められています。

以下は夫の年収が1,120万円以下の場合についての金額です。

100万円まで

給与所得控除65万円と住民税の非課税控除額35万円を合計した100万円までの収入であれば、妻の収入額が控除額以下となり妻の住民税が発生しません。(住民税は自治体により基準額が異なるため発生する場合もあります。)

103万円まで

給与所得控除65万円と所得税の配偶者控除38万円を合計した103万円までの収入であれば、妻の収入額が控除額以下となり妻の所得税が発生しません。

130万円以上

妻の給与収入が130万円以上になると、夫の扶養を外れ妻の勤め先の社会保険に加入することが義務付けられます。

150~201.6万円

妻の収入が103万円を超えると配偶者控除は配偶者特別控除という名称に変わり、150万円までは配偶者控除と同じ38万円、150万円を超えて201.6万円まで段階的に配偶者特別控除の金額が減額されていきます。

税金・社会保険のプラスマイナスは?

上記の100万円、103万円の壁については、収入がそれを超えた場合に支払う税金もそれほど大きなものではありません。会社によっては家族手当、扶養手当の基準としている場合があるので、収支という点ではそちらのほうが大きくなる場合もあり得ます。

社会保険料を負担しなければならない130万円の壁が最も所得に影響を与える可能性がありますが、厚生年金の保険料を免除された(第3号被保険者であった)場合にもらえる年金は国民年金の部分の老齢基礎年金のみとなります。

単純に手取り額だけではなく、働き方や将来の備えなど、扶養に入るかどうかは総合的に考える必要があります。

親を扶養に入れるべきかどうか

年金を受給している年齢の親を自分の扶養に入れるかどうかについても節税のメリットがあります。所得税、住民税の扶養控除を上で示しましたが、控除額✕税率分だけ税金が安くなります。所得税率を10%とした場合に、所得税、住民税それぞれに数万円程度減税となるため、支払っている税金が多めの場合はメリットが大きいと言えるでしょう。

高額療養費の所得区分

親を扶養に入れることがデメリットとなる可能性があるのは、高額療養費制度を利用した際の自己負担額に影響する点です。限度額は扶養者の所得によって決まるため、扶養外の親の所得を基準とした場合のほうが自己負担額が少なくてすむことになります。

扶養家族については以下の記事も御覧ください。

この記事の情報は2019/10/16時点のものです。

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